遺留分侵害に対する課税
円滑な財産承継は親の願いですが、遺言を作成する際には、相続人の遺留分についても考慮する必要があります。
遺留分とは
民法では、相続人の生活保障や公平な財産分配を目的として、財産が特定の人に集中して遺贈・贈与されることのないよう、一定の相続人に対して、財産の一定割合を「遺留分」として取得する権利を認めています。
相続人が被相続人の父母などの直系尊属のみである場合、遺留分の総額は、遺留分を算定するための財産価額の3分の1です。
それ以外の場合は、財産価額の2分の1です。
この割合に、それぞれの法定相続分または代襲相続人の相続分を乗じた金額が、各相続人の遺留分となります。
なお、兄弟姉妹には遺留分を取得する権利はありません。
遺留分を侵害する遺言の効力
遺留分を侵害する内容の遺言が作成されていても、その遺言の効力が失われるわけではありません。
受遺者は、被相続人の遺言に従って財産を取得します。
一方、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを、受遺者や受贈者に請求することができます。
公正証書遺言を作成する場合、公証人から、遺言の内容によって遺留分侵害が起きる可能性について説明を受けることがあります。
遺言者は、その説明を踏まえ、遺言の内容を改めて検討することができます。
また、法的な効力はありませんが、遺言書に「付言事項」として、なぜそのような遺言を作成したのか、家族に対する思いや希望などを残すこともできます。
遺留分侵害額請求による課税への影響
遺留分侵害額請求によって財産が移転すると、相続税などの課税関係に影響が生じます。
相続税の申告書を提出した後、遺留分侵害額請求によって金銭の交付が行われた場合、金銭を取得した相続人が新たに相続税の申告をする必要があるときは、期限後申告書を提出することができます。
また、すでに申告していた相続税額に不足が生じるときは、修正申告書を提出することができます。
一方、金銭を支払った受遺者・受贈者は、当初申告した相続税額が過大になるため、遺留分侵害額請求による支払額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に、更正の請求を行うことができます。
なお、受遺者・受贈者が、遺留分侵害額請求に基づく債務を金銭ではなく、不動産や株式などの財産で支払った場合、その財産の譲渡所得について所得税が課税されます。
遺言があっても遺産分割協議は可能
遺言書が作成されている場合でも、相続人全員が合意すれば、遺言の内容とは異なる遺産分割を行うことができます。
この場合、受遺者は遺贈を放棄し、各相続人は、遺産分割協議に従って財産を取得したものとして扱われます。
各相続人は、実際に取得した財産の額に応じて、通常どおり相続税の申告を行うことになります。
また、遺留分を放棄したことによって、贈与税が課税されることはありません。
円滑な財産承継のために
遺留分をめぐる問題は、相続人同士の感情的な対立に発展することがあります。
遺言を作成する際には、財産を誰に承継させるかだけでなく、ほかの相続人の遺留分や、遺留分侵害額請求が行われた場合の資金準備、税務上の影響についても検討しておくことが大切です。
日頃から家族で話し合い、財産を承継させる理由や本人の思いを伝えておくことが、円滑な財産承継につながります。

