「適格返還請求書」とは
インボイス制度導入当初は、取扱いに混乱も
インボイス制度の導入当初は、「振込手数料」の取扱いについて混乱がありました。
買手が代金から振込手数料を差し引いて支払った場合、税務上は「売上値引き」となります。そのため、売手は買手に対して「返還インボイス(適格返還請求書)」を発行する必要があるとされていました。
経理現場では、「数百円の振込手数料のために書類を発行するのか」と戸惑いの声もありました。
しかし、令和5年度税制改正により、税込価額1万円未満の返還については、返還インボイスの交付義務が免除されました。
これにより、少額の振込手数料については、実務上の負担が軽減されています。
返還インボイスの記載事項を再確認
卸売業やメーカーなど、リベートのやり取りが頻繁にある会社では、返還インボイス(適格返還請求書)の重要性は変わりません。
次のような取引は、消費税法上の「売上げに係る対価の返還等」に該当します。
売手は原則として、返還インボイスを発行しなければなりません。返還インボイスがない場合、売上げの返還等に係る消費税額の控除ができない可能性があります。
売上げに係る対価の返還等の例
・売上返品
・売上値引き
・売上割戻し(リベート)
・売上割引
・販売奨励金
・販売高や販売数量に応じて支払う報奨金 など
適格返還請求書の記載事項
返還インボイスには、次の5項目を記載することが定められています。
1.登録番号および発行者の氏名または名称
適格請求書発行事業者の登録番号と、発行者の氏名または名称を記載します。
2.次の2つの取引年月日
・売上返品や値引きなどを行った年月日
・返品や値引きの基となった課税取引を行った年月日
(返還対象となる元の取引日)
特に、返還対象となった元の取引日を明記する点が、返還インボイスの特徴です。
「○月売上分」のように、一定期間をまとめて記載することもできます。
3.返還等の基となった課税取引の内容
売上返品や値引きなどの対象となった、元の課税取引の内容を記載します。
軽減税率の対象となる資産の譲渡等である場合は、その旨も記載します。
4.返還等の税抜価額または税込価額
返還等の税抜価額または税込価額を、税率ごとに区分して合計した金額を記載します。
5.返還等の金額に係る消費税額等
返還等の金額に対応する消費税額等、または適用税率を記載します。
書類発行をめぐる実務上の注意点
返還インボイスは、原則として売手側に発行義務があります。
一方、リベートの計算は、買手側である小売店などが行うケースも多くあります。そのため、取引先との間で「どちらが書類を作成するのか」が問題になることがあります。
実務上は、買手側が「支払通知書」や「仕入明細書」に返品、値引き、リベートなどの内容を記載し、売手側に確認・承認してもらう方法も認められています。
継続的にリベートや値引きが発生する取引では、書類の作成者、記載内容、確認方法を、あらかじめ取引先と取り決めておくことが重要です。

